インフレーション / デフレーション / CPI / フィリップス曲線 / スタグフレーション
インフレ・デフレは金融政策の根幹に関わる重要テーマです。単なる「物価が上がる」「物価が下がる」という現象の理解にとどまらず、 CPIの読み方・フィリップス曲線の短期・長期の差異・デフレスパイラルのメカニズム・ 期待拡張モデルまで体系的に理解することが試験対策の鍵となります。このページでは、試験で問われやすいポイントを中心に、 価格動向に関する主要概念を整理します。
インフレーション(インフレ)とは、一般的な物価水準が持続的に上昇する現象です。 同じ金額で買える財・サービスの量が減少し、お金の価値が低下します。低率のインフレは経済成長の指標ともなりますが、 過度なインフレは資産の実質価値を減らし、貯蓄を蝕みます。
| 種類 | 発生メカニズム | 典型例 |
|---|---|---|
| 需要プル型インフレ | 総需要が総供給を上回る(「多すぎるお金が少なすぎる商品を追う」)。生産能力限界に達した経済で、需要が増えると価格が上昇。 | 好況期・バブル期の物価上昇、先進国の過熱経済 |
| コストプッシュ型インフレ | 原油価格上昇・賃金上昇・為替円安などにより企業の生産コストが増加し、それが価格転嫁される。供給側の制約が原因。 | オイルショック、2022年の世界的インフレ、円安による輸入品の値上げ |
デフレーション(デフレ)とは、一般的な物価水準が持続的に下落する現象です。 一見すると物価が安くなるため消費者にとって有利に思えますが、実は極めて深刻な経済危機です。
デフレの最も恐ろしい側面は「デフレスパイラル」です。以下の悪循環が自動的に拡大していきます:
CPI(Consumer Price Index)は、一般家庭の購入する財・サービスの物価変動を測定する指数です。 中央銀行や政府が物価を把握し、金融政策・財政政策を立案する際の最重要統計です。
統計局が毎月全国の約2万店舗から約600品目の価格を調査し、「基準時点(通常2020年=100)」との比較で指数化します。 各品目には消費ウェイト(ウエイト)が付けられます。
| 品目グループ | 代表例 | ウェイト(目安) |
|---|---|---|
| 食料 | 米、野菜、食肉、水道代 | 約23% |
| 交通・通信 | ガソリン、電車、携帯電話、インターネット | 約19% |
| 教養娯楽 | 書籍、レジャー、教科書 | 約11% |
| その他 | 衣類、住居、医療、家具など | 約47% |
| 指標 | 対象 | 特徴 |
|---|---|---|
| CPI | 消費者が購入する品目 | 毎月公表で速度が速い。生活への実感に近い。 |
| GDPデフレーター | GDP全体(消費+投資+政府支出+輸出など) | 四半期ごと。経済全体の物価動向をより広く反映。 |
「CPI=100を超えた」≠「物価が100%上昇」。例えばCPI=105は「基準年比で5%上昇」という意味です。
フィリップス曲線は、失業率とインフレ率の関係を示した古典的な経済学の重要概念です。 短期と長期で異なる関係が成立することが、現代マクロ経済学の中心的な議論です。
短期的には、失業率が低下(経済が過熱)するとインフレ率が上昇し、 失業率が上昇(景気が悪い)するとインフレ率が低下する、という負の相関が観察されます。
しかし、1970年代のスタグフレーション(高失業・高インフレが同時発生)により、 短期フィリップス曲線の安定性に疑問が生じました。現代経済学は「期待拡張フィリップス曲線」を採用しています。
π:実現インフレ率 / πe:期待インフレ率 / u:失業率 / un:自然失業率
人々がインフレを完全に予想するようになると、失業率がどのような水準であっても、 実現インフレ率は期待インフレ率に収束します。つまり、長期的には失業率を恒久的に低下させることはできず、 金融政策はインフレ率にのみ影響します(垂直なフィリップス曲線)。
スタグフレーション(stagflation)とは、低成長と高インフレが同時に発生する現象です。 語呼は「停滞(stagnation)」と「インフレーション」の合成語です。通常、これら2つは同時に発生しないはずなのですが、 供給ショックで可能になります。
| 原因 | 経路 | 歴史的事例 |
|---|---|---|
| 供給ショック(特にコストプッシュ型) | 原油価格急上昇 → 生産コスト増 → 価格上昇 + 生産低迷 → インフレ + 低成長 | 1973年と1979年のオイルショック |
| 構造的問題 | 労働生産性の低迷 + 独占力のある企業の価格引き上げ → 実質賃金低迷でも名目インフレ | 2022年の供給制約による世界的インフレ |
需要不足ではなく、産業構造や労働市場の硬直性など「構造的な理由」によるインフレを指します。 特に労働市場が硬直的で賃金が下がりにくい場合、一度上がったインフレ率が容易に下がりません。
① 「短期は負の相関、長期は垂直」という基本を押さえる
② 「期待インフレ率の上昇 = フィリップス曲線全体の上方シフト」
③ 「自然失業率での失業 = 加速インフレを起こさない失業率」
「スタグフレーション = 金融政策で対応不可能」という特徴を理解しましょう。 インフレを抑えるため金融引き締めをすると失業が増加し、 失業を減らすため金融緩和をするとインフレが加速してしまいます。